投稿者: 蘇木亮太

  • 【統合報告書アワード】日経/GPIF/WICIが選ぶ統合報告書の好事例(2024)

    【統合報告書アワード】日経/GPIF/WICIが選ぶ統合報告書の好事例(2024)

    はじめに

    現在国内では、主に以下3つの機関が統合報告書の表彰(選定)を行っています。

    1. 日本経済新聞社「日経統合報告書アワード」
    2. 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)『GPIFの国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」』
    3. WICIジャパン「WICI 統合リポート・アウォード」

    本記事では、上記3機関が表彰(選定)した企業をリストアップするとともに、人的資本について、特に先進的な開示を行っている企業をご紹介します。

    1. 日経統合報告書アワード

    日経統合報告書アワードは日本経済新聞社が主催、金融庁、経済産業省、日本公認会計士協会が後援する国内最大級の統合報告書アワードです。2024年は過去最大の475社・団体が参加し、以下の60社が受賞しました。

    アワード企業名市場区分業種区分
    総合グランプリデンソープライム輸送用機器
    総合グランプリ日本ペイントホールディングスプライム化学
    総合グランプリ丸紅プライム卸売業
    グランプリE賞積水化学工業プライム化学
    グランプリS賞しずおかフィナンシャルグループプライム銀行業
    グランプリS賞積水ハウスプライム建設業
    グランプリG賞栗田工業プライム機械
    準グランプリ旭化成プライム化学
    準グランプリイトーキプライムその他製品
    準グランプリ伊藤忠商事プライム卸売業
    準グランプリSWCCプライム非鉄金属
    準グランプリオリックスプライムその他金融業
    準グランプリ富士通プライム電気機器
    新人賞エイチ・ツー・オーリテイリングプライム小売業
    優秀賞アシックスプライムその他製品
    優秀賞アステラス製薬プライム医薬品
    優秀賞石原産業プライム化学
    優秀賞ANAホールディングスプライム空運業
    優秀賞SCSKプライム情報・通信業
    優秀賞NTTデータグループプライム情報・通信業
    優秀賞大塚ホールディングスプライム医薬品
    優秀賞オムロンプライム電気機器
    優秀賞花王プライム化学
    優秀賞カナデビアプライム機械
    優秀賞兼松プライム卸売業
    優秀賞キリンホールディングスプライム食料品
    優秀賞クボタプライム機械
    優秀賞KDDIプライム情報・通信業
    優秀賞小松製作所プライム機械
    優秀賞Sansanプライム情報・通信業
    優秀賞参天製薬プライム医薬品
    優秀賞住友化学プライム化学
    優秀賞住友ゴム工業プライムゴム製品
    優秀賞セイコーエプソンプライム電気機器
    優秀賞ソフトバンクプライム情報・通信業
    優秀賞大成建設プライム建設業
    優秀賞大和証券グループ本社プライム証券、商品先物取引業
    優秀賞TDKプライム電気機器
    優秀賞ディッププライムサービス業
    優秀賞東急不動産ホールディングスプライム不動産業
    優秀賞東京応化工業プライム化学
    優秀賞戸田建設プライム建設業
    優秀賞ニチレイプライム食料品
    優秀賞野村総合研究所プライム情報・通信業
    優秀賞パーソルホールディングスプライムサービス業
    優秀賞日立製作所プライム電気機器
    優秀賞富士フイルムホールディングスプライム化学
    優秀賞本田技研工業プライム輸送用機器
    優秀賞三井住友トラストグループプライム銀行業
    優秀賞三井物産プライム卸売業
    優秀賞三井不動産プライム不動産業
    優秀賞三越伊勢丹ホールディングスプライム小売業
    優秀賞三菱重工業プライム機械
    優秀賞三菱商事プライム卸売業
    優秀賞ミネベアミツミプライム電気機器
    優秀賞村田製作所プライム電気機器
    優秀賞ゆうちょ銀行プライム銀行業
    優秀賞横浜ゴムプライムゴム製品
    優秀賞リゾートトラストプライムサービス業
    優秀賞レゾナック・ホールディングスプライム化学
    https://ps.nikkei.com/nira/result24.html

    2. GPIFの国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」

    年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国内株式の運用を委託している運用機関18社が評価した統合報告書のリストです。「優れた統合報告書」として78社が選定されています。

    企業名市場区分業種区分
    INPEXプライム鉱業
    住友林業プライム建設業
    大和ハウス工業プライム建設業
    積水ハウスプライム建設業
    森永製菓プライム食料品
    アサヒグループホールディングスプライム食料品
    不二製油グループ本社プライム食料品
    双日プライム卸売業
    味の素プライム食料品
    クラレプライム化学
    旭化成プライム化学
    レゾナック・ホールディングスプライム化学
    信越化学工業プライム化学
    三井化学プライム化学
    三菱ケミカルグループプライム化学
    積水化学工業プライム化学
    UBEプライム化学
    野村総合研究所プライム情報・通信業
    花王プライム化学
    アステラス製薬プライム医薬品
    中外製薬プライム医薬品
    参天製薬プライム医薬品
    富士フイルムホールディングスプライム化学
    デクセリアルズプライム化学
    出光興産プライム石油・石炭製品
    ブリヂストンプライムゴム製品
    AGCプライムガラス・土石製品
    JFEホールディングスプライム鉄鋼
    東洋製罐グループホールディングスプライム金属製品
    LIXILプライム金属製品
    リクルートホールディングスプライムサービス業
    小松製作所プライム機械
    クボタプライム機械
    荏原製作所プライム機械
    日立製作所プライム電気機器
    オムロンプライム電気機器
    日本電気プライム電気機器
    富士通プライム電気機器
    日本信号プライム電気機器
    ソニーグループプライム電気機器
    TDKプライム電気機器
    デンソープライム輸送用機器
    ウシオ電機プライム電気機器
    村田製作所プライム電気機器
    三菱重工業プライム機械
    コンコルディア・フィナンシャルグループプライム銀行業
    フタバ産業プライム輸送用機器
    本田技研工業プライム輸送用機器
    北國フィナンシャルホールディングスプライム銀行業
    HOYAプライム精密機器
    キヤノンプライム電気機器
    バンダイナムコホールディングスプライムその他製品
    NISSHAプライムその他製品
    アシックスプライムその他製品
    エフピコプライム化学
    イトーキプライムその他製品
    伊藤忠商事プライム卸売業
    三井物産プライム卸売業
    東京エレクトロンプライム電気機器
    三菱商事プライム卸売業
    ユニ・チャームプライム化学
    サンリオプライム卸売業
    日本瓦斯プライム小売業
    丸井グループプライム小売業
    イオンプライム小売業
    三菱UFJフィナンシャル・グループプライム銀行業
    三井住友トラストグループプライム銀行業
    千葉銀行プライム銀行業
    山陰合同銀行プライム銀行業
    みずほフィナンシャルグループプライム銀行業
    オリックスプライムその他金融業
    第一生命ホールディングスプライム保険業
    東京海上ホールディングスプライム保険業
    三井不動産プライム不動産業
    東海旅客鉄道プライム陸運業
    ANAホールディングスプライム空運業
    九州電力プライム電気・ガス業
    SCSKプライム情報・通信業
    https://www.gpif.go.jp/esg-stw/20250311_integration_report.pdf

    3. WICIジャパン 統合リポート・アウォード

    統合報告(Integrated Reporting)の普及活動を推進するWICIジャパンが開催するアワードです。
    本年は以下の8社が受賞しました。

    企業名市場区分業種区分
    Gold Award伊藤忠商事プライム卸売業
    Gold AwardTDKプライム電気機器
    Gold Award野村総合研究所プライム情報・通信業
    Silver Award東京応化工業プライム化学
    Silver Awardロームプライム電気機器
    Bronze AwardMS&ADインシュアランスグループホールディングスプライム保険業
    Bronze Award塩野義製薬プライム医薬品
    Special Awardイトーキプライムその他製品
    https://wici-global.com/index_ja/event/integrated_report_award/

    統合報告書における人的資本開示の好事例

    上記3機関のすべてが表彰(選定)した、伊藤忠商事、TDK、野村総合研究所、イトーキの開示事例をご紹介します。

    伊藤忠商事

    企業価値向上の向上にむけた「資本コストの低減」の文脈から人的資本経営の推進に言及がなされています。
    また、エンゲージメントサーベイ(2023年度は簡易版)によって抽出された「若手・中堅社員の更なる働きがい創出」「組織の壁を超えた人材・アイデアの共有」「多様な価値観への対応」に対して、具体施策を実行していることが明確に示されています。

    伊藤忠商事 統合レポート
    伊藤忠商事「統合レポート2024」pp.80,81

    TDK

    CEOメッセージにて、非財務資本は将来的な財務的価の創造につながる「未財務資本」であり、特に「人」を最重視する旨のメッセージが示されています。
    また、PBRの向上と人的資本を含む「未財務資本」の関係性をツリー図で整理されています。

    TDK 統合報告書
    TDK「統合報告書2024」p.20

    野村総合研究所

    CEOメッセージでも「付加価値で差別化を図るために必要な人的資本戦略を強い信念で実施」と述べられており、特に人材育成について、制度や仕組み、投資額に至るまで具体的、網羅的な開示がなされています。
    また、中期経営計画に対する人事施策の柱とKPI、その目標値と実績値が明示されています。

    野村総合研究所 統合レポート
    野村総合研究所「統合レポート」p.60

    イトーキ

    経営目標と人材戦略にかかるビジョン、テーマ、アクション、アウトプットの連動をツリー図を用いて可視化しています。
    また、人事本部長と営業メンバーとの座談会や、人事制度改革、人的資本投資、エンゲージメントスコアなど、定性・定量の両面で豊富なコンテンツが示されています。

    イトーキ「統合報告書2024」p.59

    終わりに

    企業価値レポーティング・ラボによると、2024年の統合報告書発行企業数は1,177社となりました。このうち上場企業が1,090社と、初めて1,000社を超えました。
    ESG投資の拡大にかかる投資家からの要求や、非財務資本の評価による企業価値の向上、マルチステークホルダーコミュニケーションの深化等の文脈で、統合報告書の発行企業は今後もますます増加、高度化することが予想されます。

    弊社コトラは、業種や企業規模を問わず、統合報告書や有価証券報告書、人的資本レポート等における人的資本開示のご支援を行っております。
    「有価証券報告書、統合報告書でどのように開示すれば投資家や求職者に評価されるのかわからない」、「同業他社と比較した自社の水準感を知りたい」、「ISO 30414について詳しく教えてほしい」などのお悩みがあれば、ぜひ一度、お問い合わせください。


  • コンクリートコーリング(西日本)様のISO 30414認証取得および人的資本レポートの発行を支援いたしました

    コンクリートコーリング(西日本)様のISO 30414認証取得および人的資本レポートの発行を支援いたしました

    コトラのサポートのもと、コンクリートコーリング(西日本)様は、2/28に「ISO 30414(中小企業対象指標)」の認証を取得し、「People Fact Book 2025」をリリースいたしました。
    コンクリートコーリング(西日本)様のISO 30414認証取得は、建設業の中小企業では初、国内では19社目となります。

    コンクリートコーリング株式会社(西日本) People Fact Book 2025

    ISO30414認証取得の背景・目的

    コンクリートコーリング(西日本)様は、ISO30414の認証取得の背景・目的について次のように述べられています。

    「ISO30414の認証取得により社内体制を整備し、情報の信頼性と信用性を向上させる目的があります。コンクリートコーリング(西日本)は2022年に人的資本経営に積極的に取り組みますと宣言してから、2023年、2024年とISO30414をガイドラインに人的資本情報開示を行ってきました。
    このたびの認証に向けては、各指標についての責任体系を見直し、システム利用によりデータの安全性や信頼度を上げ、ベンチマークを設定するなど取り組み方を改善いたしました。」

    また、人的資本情報開示の目的は主に次の3点を挙げられています。

    「社員に対して会社の進むべき方向性を明示すること」
    「情報開示により、求職者やその親御さんに安心してもらうこと」
    「人事課題を解決し『良い会社』になっていくこと」

    詳細は以下をご参照ください。
    コンクリートコーリング(西日本)様のプレスリリース

    コトラの認証取得支援について

    コトラは下記の人的資本コンサルティングサービスを通じ、コンクリートコーリング(西日本)様のISO 30414認証取得をサポートしました。

    • 経営陣へのインタビュー
    • ISO 30414規格のレクチャー
    • フィット・アンド・ギャップ分析
    • 開示指標算出のためのサポート(定義、元データ、算出式の確定)
    • 開示体制構築のサポート
    • 社内文書整備のサポート
    • 人的資本指標データ算出、管理のためのHRDX構築のサポート
    • 人的資本報告書の作成サポート
    • 認証申請時のサポート

    詳細は以下をご参照ください。
    コトラのプレスリリース

    コトラでは今後も引き続き、ISO 30414認証取得や人的資本経営・開示を実践する企業様のご支援を行ってまいります。

  • 人的資本レポート一覧 【2025年7月版_ISO 30414事例】

    人的資本レポート一覧 【2025年7月版_ISO 30414事例】

    人的資本レポート(Human Capital Report)とは?

    企業価値向上やESG、人的資本経営への関心の高まりとともに、人材戦略や人事施策、KPIを整理した「人的資本レポート」(Human Capital Report, HR Report,People Fact Book等とも称されます)を開示する企業・組織が増加しています。

    国内においては、2021年には0社だった人的資本レポート開示企業が、2022年は7社、2023年は23社、2024年は39社に増加しました。

    人的資本レポート開示企業数
    当社調べ/各年ごとのレポート発行企業数

    本記事では、2022年~2025年(※最終更新日2025/08/01)に、国内で発行された人的資本レポートを一覧化するとともに、2018年に国際標準化機構(ISO)が発行した「人的資本に関する社内外への情報開示のためのガイドライン」であるISO 30414の活用状況の分析を行います。

    人的資本レポート(Human Capital Report)一覧とISO 30414活用状況

    2025年6月23日時点で、計55の企業・組織が人的資本レポート(Human Capital Report / People Fact Book)を公開しています。

    企業名上場区分業種ISO 30414レポート
    (2022年発行)
    レポート
    (2023年発行)
    レポート
    (2024年発行)
    レポート
    (2025年発行)
    AKKODiSコンサルティング非上場サービス業認証取得Human Capital Report 2022Human Capital Report 2023
    アサヒグループホールディングスプライム食料品参照PEOPLE & CULTURE レポート 2024PEOPLE & CULTURE レポート 2025
    アフラック非上場保険業認証取得人的資本データブック2023人的資本データブック2024
    イトーキプライムその他製品非対応人的資本レポート2025
    伊藤忠テクノソリューションズ非上場情報・通信業非対応Human Capital Overview 2024
    ウイングアーク1st非上場情報・通信業認証取得Human Capital ReportHuman Capital Report
    エア・ウォータープライム化学非対応HUMAN CAPITAL REPORT
    NECソリューションイノベータ非上場情報・通信業非対応人的資本レポート2023人的資本レポート2024(本編)
    人的資本レポート2024(データ編)
    人的資本レポート2025(本編)
    人的資本レポート2025(データ編)
    エーザイプライム医薬品非対応Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024Human Capital Report 2025
    ANAホールディングスプライム空運業非対応Human Capital Story Book
    大阪ガスプライム電気・ガス業非対応人的資本レポート2024
    大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)非上場陸運業認証取得人的資本レポート2023人的資本レポート2024
    ココナラグロース情報・通信業非対応⼈的資本開⽰ 2023年8⽉期_下期人的資本 2024年8月_上期
    コトラ非上場サービス業準拠People Fact Book 2021People Fact Book 2022People Fact Book 2023People Fact Book 2024
    小林製薬プライム医薬品非対応人的資本レポート2022
    コンクリートコーリング非上場建設業認証取得People Fact Book 2023People Fact Book 2024People Fact Book 2025
    コンフォートジャパン非上場卸売業認証取得Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024
    サントリーホールディングス非上場食料品参照人的資本レポート2025
    ジェイ エイ シー リクルートメントプライムサービス業認証取得人的資本レポート2024
    JPYC非上場情報・通信業非対応人的資本レポート 2022Human Capital Reporting 2024
    新東工業プライム機械認証取得2023 Human Capital Report2024 Human Capital Report
    シスメックスプライム電気機器認証取得サステナビリティデータブック2023サステナビリティデータブック2024
    スパイダープラスグロース情報・通信業非対応人的資本レポート
    SmartHR非上場情報・通信業非対応well-working story
    西武信用金庫非上場その他金融業非対応Human Capital Report 2024.3
    第一生命ホールディングスプライム保険業非対応人的資本レポート人的資本レポート2025
    大和ライフネクスト非上場不動産業非対応人的資本レポート
    中外製薬プライム医薬品非対応People & Culture Report 2024
    電通総研プライムサービス業認証取得Human Capital Report 2024
    東京海上ホールディングスプライム保険業非対応Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024
    東京ガスグループプライム電気・ガス業非対応人的資本レポート2024
    豊田通商プライム卸売業認証取得Human Capital Report 2022Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024
    トヨタ紡織プライム輸送用機器非対応人的資本レポート2023
    日清食品プライム食料品認証取得Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024
    日本新薬プライム医薬品非対応Human Capital Report 2024
    日本情報通信非上場情報・通信業保証取得The Human Capital Report 2022
    ノースサンド非上場サービス業認証取得Human Capital Report 2024
    パーソルホールディングスプライムサービス業非対応人的資本レポート人的資本レポート
    日立建機プライム機械認証取得Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024
    HIROBA非上場サービス業準拠Human Capital Report
    BIPROGYプライム情報・通信業非対応人財戦略レポート2024
    ブイキューブプライム情報・通信業非対応人的資本経営レポート2023人的資本経営レポート2024人的資本経営レポート2025
    フォーバルスタンダードサービス業認証取得Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024
    ペイロールグロース情報・通信業認証取得Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024
    北海道共創パートナーズ非上場サービス業認証取得Human Capital Report 2024
    マネーフォワードプライム情報・通信業非対応Talent Forward Strategy 2024Talent Forward Strategy 2025
    みずほフィナンシャルグループプライム銀行業非対応人的資本レポート2024人的資本レポート2025
    三井物産プライム卸売業認証取得人的資本レポート 2023人的資本レポート2024
    三菱UFJフィナンシャル・グループプライム銀行業非対応人的資本レポート 2022人的資本レポート 2023Human Capital Report 2025
    miraiさいわいデンタルクリニック非上場サービス業準拠People Fact Book 2022People Fact Book 2023People Fact Book 2024
    山口重工業非上場建設業保証取得Human Capital Report 2022Human Capital Report 2023
    横浜市非上場公務非対応横浜市人材成長戦略
    リンクアンドモチベーションプライムサービス業認証取得Human Capital Report 2021Human Capital Report 2022Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024
    レクストホールディングス非上場不動産業認証取得Human Capital Report 2022Human Capital Report 2023Human Capital Report 2024
    ワイヤレスゲートスタンダード情報・通信業非対応Human Capital Report 2022
    ワークスアプリケーションズ非上場情報・通信業参照人的資本レポート 2023人的資本レポート 2024
    コトラ調べ(最終更新日2025/08/01:エーザイ(2025)、第一生命ホールディングス(2025)を追加)

    開示状況の分析(累計)

    上場区分別

    • 上場区分は、プライム27社(49.1%)、スタンダード2社(3.6%)、グロース3社(5.5%)、非上場23社(41.8%)となりました。
      プライム企業に加えて、有価証券報告書等での情報開示が義務づけられていない非上場企業や自治体も、積極的に人的資本レポートを開示していることがわかります。
    市場区分別
    コトラ作成

    業種別

    • 業種別では、情報・通信業(14社)、サービス業(10社)、医薬品(4社)が上位となっています。
    業種別
    コトラ作成

    ISO30414

    • 人的資本開示のガイドラインである「ISO30414」について、23社41.8%)の企業がISO30414認証/保証を取得し、準拠/参照まで含めると28社50.9%)の企業がISO30414を活用していることがわかります。
    ISO 30414対応状況
    コトラ作成

    ご参考:人的資本開示のポイントと好事例

    人的資本開示を行う媒体としては、人的資本レポート(Human Capital Report)のほか、統合報告書、有価証券報告書などが挙げられます。各媒体ごとの開示のポイントや好事例を以下に整理しておりますのでご参照ください。

    統合報告書

    有価証券報告書

    全般

    終わりに

    ISO 30414や人的資本開示に関して、以下のようなお悩みをお持ちではないでしょうか?

    • 同業他社と比較した自社の水準感を知りたい
    • 経営戦略と人材戦略の連動をどのように可視化すればよいかわからない
    • ISO 30414認証の取得を検討しているが、どのように進めればよいかわからない
    • 有価証券報告書や統合報告書、人的資本レポートでどのように開示すれば効果的かわからない

    弊社コトラは、組織課題を解決するプロフェッショナルとして、人的資本経営に係る戦略設計から実務まで、一気通貫してご支援させていただいております。
    人的資本開示の実践、高度化にあたってお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

  • 【2025年版】金融庁「好事例集」に学ぶ有価証券報告書における人的資本開示のポイント

    【2025年版】金融庁「好事例集」に学ぶ有価証券報告書における人的資本開示のポイント

    はじめに

    有価証券報告書における人的資本開示の義務化

    投資家のESGや無形資産(非財務情報)への関心の高まり、労働市場における人材獲得の難化などを背景に、人的資本経営の推進と情報開示に対する関心は日々高まっています。

    この流れを受けて、2023年1月には「企業内容等の開示に関する内閣府令」等が改正され、2023年3月31日以降に終了する事業年度に係る有価証券報告書より、人的資本の開示項目が義務化されました(以下ご参照)

    • 「従業員の状況」に、以下三点を記載(多様性/ダイバーシティ3指標)
      • 管理職に占める女性労働者の割合
      • 男性労働者の育児休業取得率
      • 労働者の男女間の賃金の差異
    • 「サステナビリティに関する考え方及び取組」に、以下二点を記載
      • 「戦略」に「人材育成方針」「社内環境整備方針」
      • 「指標及び目標」に「戦略」に記載した方針に関する指標、当該指標を用いた目標及び実績
    金融庁「サステナビリティ情報の記載欄の新設等の改正について」よりコトラ作成
    金融庁「サステナビリティ情報の記載欄の新設等の改正について」よりコトラ作成

    迫るSSBJ基準の適用義務化

    欧州では、企業サステナビリティ報告指令(CSRD:Corporate Sustainability Reporting Directive)が導入され、2024年1月1日以降に開始する事業年度から段階的に適用が開始されています。
    また現在、日本においてもサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が、人的資本を含むサステナビリティ開示基準を策定中です。SSBJは2025年3月末までに確定基準を公表することを目指していますが、その後、2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム上場企業に適用が義務化され、その後、時価総額1兆円以上、5,000億円以上の企業へと段階的に拡大される見込みです。
    さらに、2030年代を目途に、全てのプライム市場上場企業へ適用を拡大することが予定されています。
    特にプライム上場企業においては、迫るSSBJ基準の適用に向けて、人的資本開示の水準をさらに高めることが求められます。

    本稿では、金融庁「記述情報の開示の好事例集2024」をもとに、有価証券報告書における人的資本開示のポイントを解説します。

    金融庁「記述情報の開示の好事例集」に学ぶ有価証券報告書における人的資本開示のポイント

    金融庁「記述情報の開示の好事例集2024」によると、投資家・アナリスト・有識者が期待する人的資本開示のポイントは以下のとおりです。

    投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント参考になる主な開示例
    経営戦略と人材戦略が関連した開示が重要であり、人材戦略がどのように企業価値向上につながるかについて開示することが有用。例えば、インプット情報だけでなく、人材戦略を通じてどのようなアウトプット、アウトカムを目的としているのか等を記載することが挙げられる双日株式会社
    ニデック株式会社
    株式会社SHIFT
    住友ゴム工業株式会社
    人的資本に関する非財務情報と財務情報の連動が重要で、人材が他社との差別化において重要な要素となる業種においては、定量情報を積極的に開示をすることが有用株式会社SHIFT
    人的資本に関する財務データを開示することが有用。例えば、研究開発費に含まれている人件費や、事業部門や事業ポートフォリオごとの人件費についての定量的な開示がされることで、人材投資と将来の業績に関する分析をすることができる株式会社九州フィナンシャルグループ
    天馬株式会社
    人的資本に関する戦略と指標及び目標の連動が重要であり、戦略のセクションで定めた人材戦略の進捗を図るための指標については、指標及び目標のセクションにおいて、目標と実績を定量的に開示することが有用三井物産株式会社
    株式会社SHIFT
    株式会社レオパレス21
    目指すべき理想的な目標を掲げ、現状と目標を達成するにあたってのギャップを把握し、その結果を開示することは有用。具体的には、目標を達成するには現状では何が不足しており、その不足をどのように埋めていくか等の分析の結果や対応方針、進捗状況を開示することが挙げられる株式会社九州フィナンシャルグループ
    住友理工株式会社
    株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ
    自社における管理職等の位置付けや選別の理由、管理職等を増やすための施策を開示するとともに、管理職等を増やすために設定したKPIや進捗状況を開示することが有用双日株式会社
    ニデック株式会社
    積水ハウス株式会社
    住友理工株式会社
    女性管理職比率等の多様性に関する指標については、投資判断に有用である連結ベースで開示されることが有用積水ハウス株式会社
    天馬株式会社
    出典:金融庁「記述情報の開示の好事例集2024

    要約すると、ポイントは三点です。

    1. 経営戦略、人材戦略、人事施策、KPIの連動を示すこと
      • 投資家やステークホルダーは、人的資本が「企業の成長戦略と連動しているか」に注目しています。企業価値向上の観点から、「どのような経営課題を人的資本で解決するのか」を示し、単なる施策の羅列ではなく、戦略的な整合性を明確にすることが求められます。
    2. KPIの目標(To-be)と現状(As-is)の差分に対する対策を示すこと
      • 投資家やステークホルダーは、単なる理想論や数値の大小ではなく、「今の状態と目標の間にどのような差があり、それをどう埋めるのか?」に注目しています。KPIの目標(To-be)と現状(As-is)に差分があるとすれば、その原因と、具体的な対策(進捗含め)を開示することが求められています。
    3. 人的資本投資と財務指標、企業価値との関係性を示すこと
      • 投資家やステークホルダーは、「人的資本投資が、最終的にどのような企業価値向上につながるのか?」に注目しています。人的資本を「コスト」ではなく、「収益向上・リスク低減・競争力向上に資する投資」として位置づけることで、説得力のある開示になります。

    コトラの人的資本開示高度化支援サービス

    コトラでは有価証券報告書、統合報告書、人的資本レポート(People Fact Book)における人的資本開示の高度化支援を行っております。
    人的資本開示を単なる情報開示ではなく、経営戦略に資する実効性の高い取り組みとするために、以下のステップでご支援を実施します。
    また、各開示媒体でステークホルダーから期待されるコンテンツや細かなTips、先行事例などを用いて、最適な開示のご支援をさせていただきます。

    コトラの人的資本開示支援サービス
    • 支援実績(一部)
      • 有価証券報告書:プライム/建設業、スタンダード/卸売業
      • 統合報告書:プライム/その他金融業、非上場/卸売業
      • 人的資本レポート(People Fact Book):非上場/サービス業、非上場/建設業

    「自社の取り組みをどのように開示すれば効果的なのかわからない」、「同業他社と比較して自社の水準感を知りたい」などのお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。

  • 「ジョブ型人事指針」に見る先行20社のジョブ型導入パターン【事例あり】

    「ジョブ型人事指針」に見る先行20社のジョブ型導入パターン【事例あり】

    はじめに

    日本企業は今、急速に変化する労働市場に対応するための新しい人事制度を模索しています。その一つがジョブ型人事制度です。
    従来のメンバーシップ型人事制度は、一括採用や年功序列を前提とした長期雇用が基本でしたが、グローバル化、テクノロジーの進展、そして労働市場の多様化により、多くの伝統的な日本企業が限界を感じ始めています。

    2024年8月28日に内閣官房から公開された「ジョブ型人事指針」は、2023年4月から2024年7月までの全10回にわたって開催された、「三位一体労働市場改革分科会」の議論をもとに策定されています。
    この分科会では、労働市場改革を通じて日本企業の競争力を高め、より効果的な人材活用を促進するための議論が行われれ、「個々の職務に応じて必要となるスキルを設定し、スキルギャップの克服に向けて、従業員が上司と相談をしつつ、自ら職務やリ・スキリングの内容を選択していくジョブ型人事に移行する必要がある」と結論づけられました。

    本コラムでは、ジョブ型人事制度とメンバーシップ型人事制度の比較をした上で、日本企業がどのようにジョブ型を取り入れるのか、4つのパターンに分けて、「ジョブ型人事指針」から事例を引用しつつ解説します。

    ジョブ型人事制度とメンバーシップ型人事制度の比較

    第10回 三位一体労働市場改革分科会 配布資料
    第10回 三位一体労働市場改革分科会 配布資料

    メンバーシップ型人事制度


    メンバーシップ型は、従業員を長期的に雇用し、企業が主導してキャリアを形成する制度です。新卒一括採用や年功序列が特徴で、職務範囲は広く、異動は会社主導。社員はさまざまな業務に携わり、柔軟な対応が求められますが、専門性が育ちにくく、外部市場での競争力は限定的です。

    ジョブ型人事制度


    ジョブ型は、職務に基づいて採用・評価を行う制度で、専門性を重視します。職務ごとにスキルや役割が明確で、社員は自らキャリアを選択します。市場価値に基づく報酬や、外部労働市場との連動性が高く、即戦力となる人材確保に適していますが、柔軟性に欠ける部分もあります。

    日本企業におけるジョブ型人事制度導入のパターンと事例

    コーンフェリーによると、日本企業のジョブ型人事の取り入れ方は4パターンに類型されます。
    本コラムでは、「ジョブ型人事指針」に挙げられている企業の事例と併せて解説します。

    コーンフェリー
    コーンフェリー柴田委員「三位一体労働市場改革の論点案に関する、コンサルティングの現場からの見解」

    パターンA

    • 一定職以上にジョブ型を導入。
    • 例えば管理職以上にジョブ型を導入し、一般社員には従来通りのメンバーシップ型を適用。
    • 新卒一括採用を継続する場合に相性が良く、一方で一般社員段階からのキャリア自律志向の醸成が肝となります。

    事例1:オムロン株式会社

    同社は2012年に経営基幹職(管理職及びスペシャリスト)、そして2015年に主査(非管理職の係長級)に対して、職務の役割・責任に応じた評価・報酬制度を導入しています。
    一方で、新卒入社後3~5年の主査未満の社員には、ジョブ型人事は導入していません。これは、最初の数年間は、色々な仕事を経験し、自分の強み・やりたいことを見つけていく段階にあるとしています。

    事例2:中外製薬株式会社

    同社は2020年より、管理職以上にジョブ型の「職務等級制度」を導入し、一方で、非管理職は「役割等級制度」を維持しています。
    同社のジョブ型人事は、職務に従事する社員の要件を厳格に定義した上で、高い専門性が求められる難易度の高い職務を担う人材を育成することを重視しています。
    非管理職は育成の観点から、柔軟な職務のアサインを重視しており、現状では職務等級制度の対象とはせず、役割に応じた等級制度を導入しています。

    パターンB

    • 一部の組織、職種にジョブ型を導入。
    • 例えばIT部門にジョブ型を導入し、営業部門、管理部門には従来通りのメンバーシップ型を適用。
    • 労働市場の形成状況を反映しやすく、一方でジョブ型⇔メンバーシップ型をまたぐ異動の難易度が高いと言えます。

    事例1:ソニーグループ株式会社

    同社は「ジョブグレード制度」を、ソニーグループ株式会社、ソニー株式会社、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の3社と、そのグループ会社に所属する約5万人を対象に、管理職と非管理職で区別せず、全社的に導入しています。
    一方で、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画を担う事業会社は、アメリカに本社を置き、既にジョブ型人事制度が導入されていたことを踏まえ、別の人事制度としています。

    事例2:三菱UFJ信託銀行株式会社

    同社は2021年4月から、ファンドマネージャーだけを対象として職務給のみの報酬体系を導入し、2023 年4月からは定年後の再雇用者にも導入しました。
    そして、2024年4月からは、事業部門から希望が強い、具体的には「外部提携運用」、「サイバーセキュリティー」、「データサイエンティスト」、「ビジネスアーキテクト」の領域に、第一弾として「プロフェッショナルジョブ人事制度」を適用しています。

    パターンC

    • 高度専門人材にジョブ型を導入するパターン。
    • 例えば中途採用者を中心とする高度専門人材にジョブ型を導入し、その他は従来通りのメンバーシップ型を適用。
    • タイプBと同様に労働市場の形成状況を反映しやすく、一方で同じ組織体にジョブ型とメンバーシップ型の人材が併存するため、マネジメントの難易度が高いと言えます。

    事例1:富士通株式会社

    同社はパターンC、Dの併用型と言えます。
    既に管理職だけでなく非管理職にジョブ型を導入し、2026年4月入社者からは、入社時からのジョブ型適用を開始します。
    それに加えて、中長期的に同社のビジネス拡大に向けて重要で、かつ市場価値が急騰している領域、例えばセキュリティ、データサイエンス、AI等の領域を対象に、市場価値に照らして魅力的な報酬を設定する「高度専門職系人材処遇制度」を適用しています。各領域で特に高いスキルを持っている社員を認定した上で、等級に基づく基本給に加えて、当該領域のスキル・専門性の高さに応じて一定額を加算する仕組みとしています。

    事例2:ENEOS株式会社

    同社は現状、パターンA、Cの併用型と言えます。
    既に同社と同社の持株会社であるENEOSホールディングス株式会社の管理職、そして60歳以上のシニア社員にジョブ型を導入しています。
    それに加えて、即戦力人材を確保するために、高度専門人材、具体的には高度なITスキルの保有者や法務・プロジェクトマネジメントの専門家に対しては、市場価値に応じて処遇を設定できるコースを別途新設し、通常の等級における報酬区分にあてはまらない処遇を適用しています。

    パターンD

    • 全社員にジョブ型を導入。
    • 新卒採用時からの職種別採用が前提となるため、移行の負担が大きいものの、全社の人事制度に一貫性を持たせることができます。

    事例1:株式会社レゾナック・ホールディングス

    同社は2023年1 月の事業統合に伴う「レゾナック」への商号変更と同時に、全社でジョブ型を導入しました。

    事例2:株式会社リコー

    同社は2022年4月、国内グループ企業の管理職・非管理職に対して、一斉にジョブ型人事を導入しました。人材マネジメントの在り方を変革するにあたって、制度は一貫性を持たせる必要があると考え、導入範囲を管理職のみに限定せず、全社に導入したとのことです。

    おわりに

    日本企業におけるジョブ型人事の導入は、企業ごとの経営戦略や組織文化に応じてさまざまな形で進められています。
    管理職から導入し、段階的に全社的に導入する企業もあれば、特定職種に絞った部分的な導入を選択する企業もあります。ジョブ型とメンバーシップ型をどのようにバランスよく取り入れるかが、今後の人材活用の鍵となるでしょう。

    本コラムでは特に、各社のジョブ型制度の導入範囲に焦点を当てて事例を紹介しましたが、「ジョブ型人事指針」では、ⅰ)制度の導入目的、経営戦略上の位置付け、ⅱ)導入範囲、等級制度、報酬制度、評価制度等の制度の骨格、ⅲ)採用、人事異動、キャリア自律支援、等級の変更等の雇用管理制度、ⅳ)人事部と各部署の権限分掌の内容、ⅴ)労使コミュニケーション等の導入プロセスの共通したフォーマットで、20社の事例が解説されています。
    「ジョブ型人事指針」を参考に、自社のスタイルに合った導入方法を検討してみてはいかがでしょうか。

    弊社コトラは、業種や企業規模を問わず、人材戦略の策定、運用、ISO 30414認証取得や人的資本開示のご支援を行っております。人的資本経営の実践・開示のお悩みがあれば、ぜひお問い合わせください。