ISO30414とは?よくある質問と回答を解説【2024年6月更新】

ISO30414 よくある質問

ISO30414規格について

Q:ISO30414とは?

A:ISO30414とは、国際標準化機構(ISO)が2018年に策定した、「人的資本に関して内外に情報開示するための国際標準ガイドライン規格」です。

ISO 30414:2018
Human resource management
Guidelines for internal and external human capital reporting
https://www.iso.org/standard/69338.html

▼ISO(International Organization for Standardization)のホームページ
https://www.iso.org/home.html

Q:ISO30414の測定指標とは何ですか?指標数はいくつですか?

A:ISO30414の測定指標とは、ISOが全世界のあらゆる人事領域の有識者の検討結果をもとに厳選された、人的資本開示における重要な指標(KPI)です。ISO30414では、コスト、ダイバーシティ、リーダシップ、生産性、スキルと能力など11の項目(領域)で合計58の指標が定められています。

Q:大企業と中小企業で測定指標の数に違いはありますか?

A:開示指標数に違いがあります。大企業では58指標を測定し、そのうち23指標を社外に開示することが推奨されています。中小企業では32指標を測定し、そのうち10指標の社外開示が推奨されています。
社外開示しない項目については、社内にて経営層へ報告することとなっています。従業員へ全ての指標を開示することは求められていませんが、指標ごとに社内共有の方針について決定する必要があります。

Q:ISO30414での開示はどのような形で行われるのですか?

A:ISO30414では、全58指標の結果は全てデータから計算で導き出されるものであるため、開示は全て数値となります。但し、定性的なコメントを補足として追加することは推奨されています。
また、58指標以外の指標を企業が自主的に設定して追加開示することも推奨されています。

Q:ガイダンス規格(ガイドライン規格)とは何ですか?

A:ISO規格は大きく、1.工業規格、2.マネジメントシステム規格、3.ガイダンス規格、の3つにわけられます。
ISO9001や14001などのマネジメントシステム規格では、規格内に「要求事項」(英語でshallが使われる)があり、その基準を満たすかどうかについて、ISOの認定・認証ルールに基づく認証制度があり、希望する企業は審査を受けることが可能です。
ガイダンス規格は、組織がより良いありかたを検討するにあたって、ISOが世界中の有識者を集めて作成した、国際的な手引書という存在になります。規格は「推奨事項」(英語でshouldが使われる)で構成され、推奨事項は国際的なベストプラクティス(お手本)という位置づけになります。従って、この推奨事項に準拠することは、様々な組織団体から国際的に高い評価を受けることにつながります。

Q:ISO30414の規格について詳細を教えてください。

A:ISO30414では11項目に58の測定指標があります。
項目・指標の一覧についてはこちらのコラムをご確認ください。

人的資本開示をめぐる動向とISO30414の活用ポイント【後編】~数値による可視化で企業価値を高める~

ISO30414の規格書自体を入手したい場合は、日本規格協会のホームページから購入することが可能です。
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=ISO+30414%3A2018


コトラでは、ISO30414規格の各項目・指標を正しく解釈し、貴社の業務プロセスで活用するためのノウハウを提供しております。詳しくはお問い合わせください。

ISO30414の認証について

Q:ISO30414に、ISOの認証基準に基づく認証制度や認証機関はありますか?

A:現状はマネジメントシステム規格ではないので、ISOの認証基準に基づく認定・認証制度や認証機関はありません。

Q:ISO9001やISO14001などのISOの認証審査を扱っている認証機関なら認証取得は可能ですか?

A:ISOマネジメントシステム規格の認証は、各審査機関で、規格ごとにできるできないが決まっています。たとえISO9001の認証審査機関であっても、上述の通りISO30414は認証規格(マネジメントシステム規格)ではないので、審査をすることはできません。

Q:ISO30414の認証は取得できますか?

A:可能です。ISO30414について専門知識を持つ企業から第三者認証を受けることにより取得することが可能です。日本ではHCプロデュース社が認証サービスを提供しています。またBSIジャパンが第三者保証サービスを提供しています。

Q:ISO認証を取得している企業の事例はありますか?

海外ではドイツ銀行及びドイツアセットマネジメント(DWS)が、認証取得を公表しております。
日本においては、リンクアンドモチベーション、日清HD、大阪メトロ、豊田通商、日本情報通信など15社が認証・保証を取得しています。(2024年4月現在)
詳しくは下記コラムをご参照ください。

【ISO30414取得企業多数】国内34社の人的資本レポート一覧
https://consulting.kotora.jp/human-capital/human_capital_report_2024/

Q:認証取得にはどれくらい期間がかかりますか?

A:企業規模やデータの取得状況、対応範囲等により異なりますが、一般的には審査の準備に半年〜1年程度かかります。審査については2〜3ヶ月程度です。認証取得の期間について詳しくはお問合せください。

Q:ISO30414の認証取得した際の有効期間と費用はどうなりますか?

A:認証期間については他のISOマネジメントシステム規格と同様原則3年間となります。ただし、認証を取得してから1年後および2年後に通常のISO認証規格と同様「維持審査」に相当するものが行われます。また、3年後には同様に「更新審査」に相当するものがあります。費用については企業規模や審査機関によって異なりますので詳細は審査機関にお問い合わせください。

Q:ISO30414への対応や認証取得にあたり、社内のリソースはどれくらい必要ですか?

A:データ測定の実現度合いや企業規模などにより異なりますので一概には申し上げられませんが、人事部を中心として事務局的な機能があるとスムーズに進むと思われます。専任である必要はありませんが、各種ドキュメントの作成、データ取得・分析、社内関連部署との調整、認証機関との調整、開示物の制作、社内教育など一定の業務は発生しますので複数人で対応いただくケースが多いです。

Q:ISO30414が認証規格となる可能性はありますか?

A:あります。ISO30414の策定にあたったTC260(Technical Committee:専門委員会)によって、人的資本に関する認証規格「ISO30201」の策定が進行中です。タイトルは「Human Resource Management System — Requirements」となっており、マネジメントシステム規格であり、要求事項が示されることがわかります。
現在は、「30.20 CD consultation initiated」というフェーズで、Commitee Draft(委員会草案)が完成し、その内容が委員会(TC260)にて精査されている段階です。各国代表の委員会メンバーの承認が得られれば、次のフェーズ(DIS:国際標準への承認)に移行します。(2024年6月8日時点)。
ISO30201については、ISO30414をベースにして、認証規格に必要な「要求事項」を盛り込んだものになると予想されます。

ISO/AWI 30201
Human Resource Management System
Requirements

Q:「認証」と「保証」の違いはなんですか?

A:「認証」も「保証」も「第三者によって組織や個人に対してなにかしらの一定の信用を与える」という意味では同じです。
「認証」については、一般的に「有効期間内の状態」について保証するものです。例えば運転免許証などが例として挙げられますが、一定期間についてその保証先のレベルが保たれることを保証します。
「保証」については、一般的に「ある時点の状態」について保証するものです。例えば企業の決算監査などが例として挙げられますが、数値や状態などがその時点の状況として正しいことを保証します。
ISO30414には審査機関の方針により「認証」「保証」どちらもサービスとして提供されています。

ISO30414 その他の質問

Q:ISO30414以外にも人材に関するISO規格はありますか?

A:ISOでは人材に関連するISO規格を数多く策定しています。
以下、主な人材関連のISO規格を列挙します。

No.状態規格番号・リンク和訳タイトル
1公開中ISO 23326:2022従業員エンゲージメント — ガイドラインHuman resource management — Employee engagement — Guidelines
2公開中ISO/TS 24178:2021組織文化指標Human resource management — Organizational culture metrics cluster
3公開中ISO/TS 24179:2020労働安全衛生指標Human resource management — Occupational health and safety metrics
4公開中ISO 30400:2022用語集Human resource management — Vocabulary
5公開中ISO 30401:2018ナレッジマネジメントシステム — 要件Knowledge management systems — Requirements
6公開中ISO 30401:2018/Amd 1:2022ナレッジマネジメントシステム — 要件 — 追補1Knowledge management systems — Requirements — Amendment 1
7公開中ISO 30401:2018/Amd 2:2024ナレッジマネジメントシステム — 要件 — 追補2Knowledge management systems — Requirements — Amendment 2: Climate action changes
8公開中ISO 30405:2023採用に関するガイドラインHuman resource management — Guidelines on recruitment
9公開中ISO/TR 30406:2017組織の持続可能な雇用管理Human resource management — Sustainable employability management for organizations
10公開中ISO/TS 30407:2017採用コストHuman resource management — Cost-Per-Hire
11公開中ISO 30408:2016人材ガバナンスに関するガイドラインHuman resource management — Guidelines on human governance
12公開中ISO 30409:2016労働力計画Human resource management — Workforce planning
13公開中ISO/TS 30410:2018採用の影響指標Human resource management — Impact of hire metric
14公開中ISO/TS 30411:2018採用の質指標Human resource management — Quality of hire metric
15公開中ISO 30414:2018内部および外部の人的資本報告に関するガイドラインHuman resource management — Guidelines for internal and external human capital reporting
16公開中ISO 30415:2021多様性と包摂性Human resource management — Diversity and inclusion
17公開中ISO/TS 30421:2021離職と定着指標Human resource management — Turnover and retention metrics
18公開中ISO 30422:2022学習と開発Human resource management — Learning and development
19公開中ISO/TS 30423:2021コンプライアンスおよび倫理指標Human resource management — Compliance and ethics metrics cluster
20公開中ISO/TS 30425:2021労働力の可用性指標Human resource management — Workforce availability metrics cluster
21公開中ISO/TS 30427:2021コスト指標Human resource management — Costs metrics cluster
22公開中ISO/TS 30428:2021スキルと能力指標Human resource management — Skills and capabilities metrics cluster
23公開中ISO/TS 30430:2021採用指標Human resource management — Recruitment metrics cluster
24公開中ISO/TS 30431:2021リーダーシップ指標Human resource management — Leadership metrics cluster
25公開中ISO/TS 30432:2021労働力の生産性指標Human resource management — Workforce productivity metrics cluster
26公開中ISO/TS 30433:2021後継者計画指標Human resource management — Succession planning metrics cluster
27公開中ISO 30434:2023労働力の割り当てHuman resource management — Workforce allocation
28公開中ISO 30435:2023労働力データの質Human resource management — Workforce data quality
29公開中ISO/TS 30437:2023学習と開発指標Human resource management — Learning and development metrics
30公開中ISO/TS 30438:2024従業員エンゲージメント指標Human resource management — Employee engagement metrics
31策定中ISO/AWI 30201人材マネジメントシステム — 要件Human Resource Management System — Requirements
32策定中ISO/AWI 30401ナレッジマネジメントシステム — 要件Knowledge management systems — Requirements
33策定中ISO/AWI 30414内部および外部の人的資本報告に関するガイドラインHuman resource management — Guidelines for internal and external human capital reporting
34策定中ISO/AWI TS 30436多様性と包摂性指標技術仕様Human Resource Management — Diversity and Inclusion Metrics Technical Specification
35策定中ISO/AWI 30439データプライバシー標準Human Resource Management — Data Privacy Standard
36策定中ISO/AWI 30441職場のウェルネス — ウェルビーングと効果を向上させるための実践の創造と促進Workplace Wellness — Creation and promotion of practices to improve wellbeing and effectiveness
出典:コトラ調べ 2024年5月14日現在

「Requirement」や「要件」とあるものは、いわゆる認証規格です。
No.31〜36は現在策定中のものですが、No.31の「ISO/AWI 30201」が将来的に「人的資本マネジメントシステム(ISO認証規格)となると想定されているものです。
No.33は現在のISO30414(No.15)の改訂版です。(2024中に出るのではと思っています)
注:和訳については筆者によるもので正式なものではありません。

Q:ISO30414とコーポレートガバナンス・コードの関係はありますか?

A:改訂コーポレートガバナンス・コードにて人的資本に関する原則が新規追加されております。【補充原則2−4①】では中核人材のダイバーシティについて、【補充原則3−1③】では人的資本への投資について追加されており、それぞれ開示事項となっております。これらはISO30414においても測定項目と規定されています。

Q:開示はどのような方式で行われますか?

A:HRレポート、統合報告書、CSR報告書、ホームページ等での開示が想定されております。

Q:中小企業にとって、取り組む意義はありますか?

A:ISO30414は企業規模を問わず全ての組織で適用することを想定して作られています。
中小企業にとって、ISO30414の各項目に取り組むことは、社内の人事施策の向上となり、従業員満足度や組織の効率化への取り組みにつながります。また、ISO30414では取り組みを社外だけでなく社内に向けて周知することも推奨されています。これによって、従業員に対して、会社としてきちんと人事施策向上に取り組んでいることを伝えることになり、社内の透明化、エンゲージメントの向上も見込まれます。

Q:企業の中で主体となるのはどの部署ですか?

A:ISO30414規格では人事部が主体になると規定されておりますが、データの取得や分析において、経理部、IR部、経営企画部、情報システム部などさまざまな部署の協力が必要となります。

Q:IIRC統合フレームワーク、GRIスタンダード、SASB、などの枠組みとの違いは何ですか?

A:IIRC統合フレームワークとは、財務情報と非財務情報を統合した報告書の枠組みです。
GRIスタンダードとは、非財務報告の枠組みです。
SASBスタンダードとは、将来的な財務インパクトが高いと想定されるESG要素に関する開示の枠組みです。
上記3つの枠組みは、非財務情報であるESGの三要素の開示に関する枠組みですが、ISO30414とは、人的資本の開示に特化した枠組みです。
なお、上記3つのフレームワークは現状ではISSB(IFRSの非財務情報開示標準化団体)に統合されています。

Q:ISO30414対応を今すぐやるメリットは何ですか?

A:規格では、経年による比較可能性を考慮して原則3年分のデータ開示が必要です。いち早く取り組みを始めることで、ISO30414が認証規格化された際に、すぐにISO認証取得が可能となります。
また、現状では人材に対する先進的・積極的な取り組み企業として、株主、従業員をはじめとしたステークスホルダーに対し、大きくアピールすることが可能と考えます。
さらに、社内の人事データの可視化・分析に取り組むことで、人事制度改革や社内情報共有の推進につながり、エンゲージメント向上などざまざまな組織生産性向上効果につながることが期待されます。

Q:ISO30414に対する知識があるコンサルティング会社かどうかを見分ける方法はありますか?

A:ISO30414への知識・スキルに対するコンサルタント認定資格制度があります。
(「ISO30414 Lead Auditor/Consultant Certification」)
本資格を有するコンサルタントは、ISO30414のコンサルティング、監査、認証に対して充分なスキル・知識がある証となります。当社では3名のコンサルタントがこの資格を所有しています。
詳しくは下記リリースをご参照ください。

「人的資本開示ガイドライン「ISO30414」リードコンサルタント認証取得のお知らせ 〜コトラ人的資本コンサルティング3人目のISO30414 Lead Auditor/Consultant Certificationを取得~」2024年2月14日

また、資格以外の観点としては「コンサルティング実績」が挙げられます。コンサルタント資格を持っていても実際にコンサルティング実務を行ってみないと現実的なアドバイスは難しいものです。
コトラではISO30414の認証取得コンサルティングの実績や、ISO30414を活用したHRレポート「People Fact book」の制作サポートをはじめとし、さまざまな形で企業様のISO30414活動のご支援を行っており、豊富な実務ノウハウを所有しております。

Q:ISO30414リードコンサルタントの資格を取得するにはどうすればいいですか?

A:日本ではHCプロデュース社がISOの30414リードコンサルタントの認定制度を運用しています。

株式会社HCプロデュース
「ISO 30414講座(プロフェッショナル認証/マスター/インハウス)」

2ヶ月ほどの期間で、講義、確認テスト①(知識確認)、ケーススタディ取組み(課題レポート提出)、確認テスト②(最終テスト/口頭試問)の内容となっています。

海外ではHR Metrics社が同様の内容のコンサルタント認定プログラムを提供しています。

HR Metrics
ISO 30414 Professional Certification for HR Consultants/Assessors/ Practitioners

HR Metrics社とHCプロデュース社は提携しており、認定プログラムの内容はほぼ同一となっています。

コトラでは2名がHR Metrics社から、1名がHCプロデュース社からリードコンサルタント認定を受けております。

その他ご質問がございましたら、下記問い合わせフォームからお問合せいただけましたら、個別にご回答差し上げます。(ご質問の内容によってはお答えできない可能性もございます。また、ご質問と回答について、ご質問者の許可をいただいたうえで、当Q&Aに追加する場合もございます)

コンサルタント紹介

杉江 幸一郎
ディレクター ISO30414リードコンサルタント

東京大学経済学部経営学科卒。大手メーカー、通信事業者、IT企業など上場事業会社にて経営企画、事業戦略、新規事業立ち上げ等の責任者を歴任。上場企業取締役、CISO および ISO事務局等も担当。

コトラでは、ISO30414を始めとした人的資本経営のコンサルティングに従事。ISO30414リードコンサルタント。ESG情報開示研究会、人的資本経営コンソーシアム、地方創生SDGs官民連携プラットフォーム会員。
X(旧Twitter):@Kotora_cnsl


村上 慶
エグゼクティブコンサルタント ISO30414リードコンサルタント

東北大学法学部卒。東海銀行(現三菱UFJ銀行)にて有価証券運用を担当。地方銀行及びトヨタファイナンシャルサービスにて市場リスク管理に従事後、年金コンサルティング会社で資産運用アドバイザーを担当。CFA協会認定証券アナリスト。

コトラでは、ESG/SDGs、ISO30414、人事施策、情報開示、企業年金に関するコンサルティング業務に従事。ISO30414 Lead Auditor/Consultant Certification資格所持者。


蘇木 亮太
コンサルタント ISO30414リードコンサルタント

同志社大学法学部卒。大手教育系企業でのコンサルタント経験を経て、金融系スタートアップに入社。 組織・人事企画チームに所属し、エンゲージメント向上施策やDE&I推進、研修開発、人事制度運用等を担当。

コトラでは、有価証券報告書・統合報告書における人的資本開示、ISO30414、人事組織コンサル等に従事。ISO30414リードコンサルタント資格/日本ディープラーニング協会G検定保有者。


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